夫婦とは相性ではなく、二人で作り続けるシステムである。

私事ですが、本日は4回目の結婚記念日。
そこで、データから夫婦を考えてみることにする。
夫婦とは何なのか?
愛情なのか。
相性なのか。
価値観が合うことなのか。
心理学や消費者行動研究を見ていくと少し違う姿が見えてきます。
夫婦とは相性のいい二人が一緒にいる状態ではなく、長い時間をかけて二人専用のシステムを形成していく関係なのではないか?
結婚について私たちはこう考えがちです。
・どういう性格の人がいいか
・価値観が合う人がいいか
・相性のいい人を選ぶべきだ
つまり結婚とは誰を選ぶかの問題として語られることが多いです。
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11196組の分析が示した意外な結果
2020年米国科学アカデミー紀要PNASに夫婦研究として大規模なものが掲載されました。
29の研究機関が保有していた43の縦断データセットを統合し合計11196組のカップルを機械学習で分析しています。
その結果もっとも関係の質を予測していたのは性格でも年齢でも愛着傾向でもありませんでした。
・相手がこの関係を続けようとしていると感じること
・相手への感謝
・性生活への満足
・相手もこの関係に満足していると感じること
・二人の間の葛藤
こうした今の関係を本人がどう感じているかという要素が、関係満足度のばらつきを最大約45%予測していました。
一方で年齢や性格といった個人に属する要因を足しても、予測力はほとんど増えませんでした。
どんな人を選んだかより二人の間に何が作られているかの方が効いている…
さらに、この研究では今後関係が良くなる夫婦と悪くなる夫婦をほとんど予測できなかった。
つまり結婚した時点の性格や条件だけでその夫婦の20年後が決まるわけではないということです。
これは会社経営とよく似ていると私は感じます。
創業時に優秀な人がそろっていても30年間成功する保証はありません。
市場が変わる。
社員が変わる。
顧客が変わる。
経営者自身も変わる。
だから組織は更新し続けます。
夫婦も同じなのではないでしょうか?
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夫婦は知識も記憶も分担し合うシステムである
この考え方を補強する研究がもう一つあります。
2018年Journal of Consumer Researchにテキサス大学とコロラド大学の研究者による論文が掲載されました。
テーマは夫婦の金融知識です。
関係初期では家計を担当する人が、必ずしも金融知識に優れていたわけではありませんでした。
ところが時間が経つにつれ、家計を担当する人はその領域の知識を蓄積していきます。
一方、相手に任せている側はその領域の知識があまり伸びません。
研究者たちはこの背景にトランザクティブ・メモリーという仕組みがあると説明しています。
すべてを自分で知っている必要はない。誰がそれを知っているかを知っていればいい。
・保険のことは妻が知っている
・家の設備なら夫
・学校関係は妻
・税金は夫
そんな役割分担がいつの間にか出来上がります。
この論文では、長期的なパートナーを認知的に相互依存するシステムと捉えています。
夫婦は家事だけを分担しているのではありません。
知識も記憶も判断も少しずつ分担していきます。
だから長年連れ添った配偶者を失うと、人は精神的な喪失だけでなく生活能力の一部まで失うことがあるのです。
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子どもの誕生と「もう一度同じ人を選ぶか?」という問い
子どもの誕生についても興味深いデータがあります。
2022年Frontiers in Psychology掲載のメタ分析では第一子誕生前後の夫婦関係について49研究106サンプルを統合しています。
参加者数は145139人にのぼります。
分析の結果、妊娠期から出産後12か月までの間に夫婦満足度は中程度低下していました。
子どもが生まれると夫婦仲が悪くなると解釈するのは少し違うと私は思います。
夫と妻という二人で成立していた生活に、子どもという巨大な新要素が入る。
睡眠時間、仕事、家事、育児、収入、自由時間。
限られた資源をすべて再配分しなければなりません。
会社に例えれば、既存事業を続けながら巨大な新規事業を立ち上げ、同時に組織再編をするようなものです。
以前と同じ運営方法で回らなくなるのは、むしろ当然なのかもしれません。
日本の調査にも面白いものがあります。
ソニー生命保険が2025年に実施した調査では、老後も今の配偶者と暮らしたいと回答した人が55.2%でした。
一方生まれ変わっても今の配偶者と結婚したいは43.4%にとどまり、44.9%はどちらともいえないと回答しています。
人生をゼロからやり直すなら同じ人を選ぶかは分からない。
でも今ここまで一緒に作ってきた人生はこの人と続けたい…
そういう人が一定数いるということです。
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夫婦とは「二人にしか存在しない世界」をつくること
夫婦関係を考えるとき私たちはつい個人単位で考えます。
夫はどんな人か。
妻はどんな人か。
しかし、研究を横断してみるとそれだけでは説明しきれないものがあります。
関係性、役割分担、共同記憶、意思決定のルール、資源配分、歴史。
夫と妻だけではなく夫婦という第三の存在がそこにはあります。
会社もそうです。
優秀な社員を100人集めても、それだけでは優秀な会社にはなりません。
文化、情報共有、役割、信頼、ルールといった構造が形成されて初めて組織になります。
夫婦も二人のスペックの合計ではありません。
二人の間に何が形成されたか。
そこに夫婦としての価値があるのだと思います。
最初は自分の知らないことばかりだった他人が、何十年かすると自分自身が忘れてしまった昔の自分を覚えている人になる。
考えてみれば不思議な関係です。
結婚記念日に考えるなら「まだ愛しているか」だけでなくこんな問いでもいいのかもしれません。
この人と一緒だったからこの世に生まれたものは何だろう?
家族かもしれません。
思い出かもしれません。
仕事かもしれません。
価値観かもしれません。
あるいは今の自分自身なのかもしれません…
夫婦とは恋愛の延長というより二人の人間が何十年という時間を使って共同開発する一つのシステムなのだと思います。
私は2度目の結婚なのですが、とても幸せに暮らせております。
妻に、そして関わる皆様にも改めて感謝をし、また新しい日々を楽しみたいと思います。
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