晩御飯どうしよう?に対して「簡単なものでいいよ」と答えたあなたを待つ未来。
- yuki kato
- 5月24日
- 読了時間: 3分
「簡単なものでいいよ」
──それは、たったひと言で相手の創造性を殺す魔法の呪文。
疲れた心にやさしく響くようでいて、
実は、手間・思考・感情・愛情のすべてを一瞬で棚に上げる恐ろしい言葉である。
その“軽さ”に乗っかったあなたを待っているのは、
やさしさでも、ぬくもりでも、ましてや料理でもない。
そこに広がるのは、簡単という名の無関心を具現化した7皿。
手抜きではない。これは、料理の皮を被った問いかけだ。
「あなたは、本当に“簡単”でいいのか?」
今、あなたの前に供される。
簡単の深淵を覗き込んだ7つのメニュー。
■ あるがまま乾麺(茹でてないうどん)
乾ききった関係を、どう煮るかはあなた次第。
うどんを茹でるという最小限の労力すら拒絶した一皿。
だがその潔さは、もはやアート。未調理の炭水化物が、あなたに「料理とは何か?」という禅問答を投げかけてくる。
派生メニュー
・素のまま蕎麦
・心乾きしパスタ
■ 炊き上がらぬ想い(無洗米+スプーン)
火を入れぬ愛情は、いつまでも白く冷たい。
それは食材ではなく、可能性。
炊かれていない米は、火を通さなかった“気持ち”の象徴。
だがスプーンは添えられている。未完成でも差し出す、その行為にあなたは気づくだろうか。
派生メニュー
・無洗の純情
・半炊きの片思い
■ 生きてるだけ卵(割ってすらいない)
割られることなく、生き抜く完全食。
割られることもなく、混ぜられることもなく、ただそこに在る卵。
だがその存在感は揺るぎない。扱いづらくても、そこにこそ“生命の完全形”が宿っている。
派生メニュー
・温めぬ温泉卵
・未割りの目玉焼き
■ 凍ったままの距離(冷凍枝豆)
解けるのを待つのではなく、自分が温まることも選べる。
自然解凍にすら任せない冷たさ。
だが凍ったままの食材は、凍ったままの関係にも似ている。
誰が温めるべきか──それを問うための静かな皿。
派生メニュー
・冷凍の友情コーン
・凍りきったポテト
■ 未完成みそ詩(粉だけの味噌汁)
「あとお湯だけでいいよ」なんて、人生もそんなに単純じゃない。
具も味噌もある。けれど、お湯だけが無い。
あと一歩の踏み出しができない未完成の象徴。
たった一滴の熱で完成するものほど、遠く感じる夜がある。
派生メニュー
・未着湯のカップスープ
・みそだけスタンドアローン
■ 沈黙のカップ麺(フタは開けたが、お湯は注がない)
始まりかけた物語。だが、肝心な熱意が欠けている。
「開ける」というアクションは、始まりの意思を表す。
だが肝心な熱意──お湯が欠けている。
始めたのに続かない。言いかけた言葉が喉に詰まったまま。未遂の一杯。
派生メニュー
・途中湯入れ麺
・湯だけ離脱そば
■ 中身だけの告白(ツナマヨ単品)
包まれないまま、むき出しの本音だけを差し出す勇気。
米も海苔もない。ツナマヨだけ。
だがそこには飾らない誠実さがある。
握られていないからこそ、本音がむき出し。
勇気ある本質のプレート。
派生メニュー
・具だけ握らぬ寿司
・裸のサンドイッチ
■ そして最後に──
「簡単なものでいいよ」
その言葉の軽さに、あなたは気づかなかった。
だから、これは優しさではない。問いかけだ。
あなたがこれらを目にした時、
その後のシビアな対応が必要となる。
簡単に作れる料理なんて、
この世には存在しないのである。
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