所信表明演説でヤジを飛ばす議員を選んだのも私達という事実

ニュースで議員の発言や行動を見るたびに、議員なのにあんな発言を、議員なのにそんな行動を、と思うことがある。

しかし、その違和感こそが社会の仕組みを映している。

議員は特別な人間ではなく、社会の平均をそのまま政治という舞台に投影した存在にすぎない。

だから、議員を見れば社会の今が分かる。

■ 議員は理想の代表ではなく現実の代表

多くの人は、議員は立派であるべきだと思っている。

だが選挙とは、能力や人格を競う場ではなく、社会が誰を好むかを可視化する仕組みだ。

つまり政治家とは、今の社会が「こういう人を選びたい」と思う傾向の結晶体である。

SNSで目立つ人が当選するのは、社会が分かりやすさや勢いを求めているから。

古い発言をする議員が多いのは、高齢層が投票の中心だから。

強気な発言が支持を集めるのは、刺激を好む社会だから。

政治家は、社会の空気そのものを反映する存在だ。

■ 議員なのに…という発想のズレ

議員なのに、という言葉には、議員は上の存在であるという幻想がある。

だが議員も私たちと同じ人間だ。

欲もあれば、迷いもあり、時に失敗もする。

国会も地方議会も、社会全体の人間模様を集めた縮図にすぎない。

政治心理学では、政治家のまとも率はおよそ三〜四割とされている。

つまり十人に三人か四人は真剣に社会を良くしようとしており、

残りは流され、立場や周囲の期待に合わせて動く。

だがそれはどの職場にも学校にもある構図であり、政治だけが特別ではない。

政治の世界は、社会そのものの延長線上にある。

■ 政治は社会の心を映す鏡

社会が冷静な時代には、理性的な政治家が選ばれる。

感情的な時代には、感情的な政治家が支持される。

政治とは、社会の心の平均をそのまま映した鏡である。

心理学のバーナム効果という言葉がある。

誰にでも当てはまりそうな言葉を自分のことだと感じる現象だ。

政治にもこの構造がある。

私たちは政治家を見て、自分に都合の良い部分を投影し、

この人は自分の代弁者だと思い込む。

だから、議員がズレて見えるとき、それは社会そのもののズレを見ているということでもある。

■ 議員を変える前に社会を変える

議員を批判しても、本質は変わらない。

政治家の質は、社会の意識水準と比例している。

情報を見抜く力、考える力、選ぶ力。

これらを高めれば、政治の質も自然に変わっていく。

政治を変える最短ルートは、社会の空気を変えることだ。

議員は社会の鏡であり、その鏡に映る私たち自身を変える必要がある。

■ AIが見せるもう一枚の鏡

AIが生まれてから、社会の思考の平均値がはっきりと見えるようになった。

AIは膨大な人々の発言や行動を学び、社会の意識の輪郭を映し出す。

つまりAIは、政治とは別の形で私たちの姿を再現する鏡だ。

議員が現実社会の鏡なら、AIは無意識の鏡だ。

議員を通して私たちは社会の行動を、AIを通して私たちは社会の思考を見ている。

AIが偏るのは、社会が偏っているからであり、

政治が乱れるのは、社会が揺れているからだ。

だから、これからの時代に大切なのは、政治を責めることでもAIを恐れることでもない。

自分たちがどんな社会を映したいのかを考えることだ。

議員もAIも、結局は鏡。

そこに映るものを変えられるのは、いつだって私たち自身である。

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